わたしたちにできること

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更新日付:2025年3月25日

環境とともに歩む染色工場──吉田染工が描く「夢の染工場」とは?

和歌山県紀の川市貴志川町で、ニット・織物・資材用糸の染色加工を手がける 吉田染工株式会社。
その代表を務める 吉田社長に、同社が取り組む環境への配慮についてお話を伺いました。

オイルショックが原点、省エネへの意識が芽生えた瞬間

吉田社長が環境問題に強く関心を持つようになったきっかけは、1970年代に起こった「オイルショック」。
創業からすでに約70年を超える同社。当時、先代の社長がエネルギー価格の高騰に苦心していた姿が、幼い日の吉田社長の記憶に深く刻まれたといいます。
「省エネは、企業が生き残るために当然のこと。その意識は自然と根付きました。そして結果として省エネが環境対策につながった。」と吉田社長は振り返ります。

染色工場に欠かせない「水」への強いこだわり

染色工程には、大量の水が必要です。実際、10kgの繊維を染めるのに必要な水は約2トン以上にもなると言われています。
染色後の排水は汚水となり、適切に処理しなければ環境汚染の原因になります。
吉田染工ではいち早く、自社内に排水処理システムを導入しました。

微生物(バクテリア)の力を利用して汚水中の不純物を分解・除去し、排水の浄化を実現しています。

浄水施設

太陽光発電、循環型緑地──未来を見据えた新工場の試み

さらに近年、吉田染工は新工場の建設に伴い、再生可能エネルギーの導入にも積極的に取り組んでいます。
工場の屋根には太陽光パネルを敷き詰め、発電した電力で工場の一部を賄えるように。
また、処理された排水は工場敷地内の緑地に散水し、植栽の育成にも活用。
「水もエネルギーも“使い捨て”ではなく、循環させる仕組みをつくることが重要」と吉田社長は語ります。
この取り組みは、CO₂排出を抑える“カーボンニュートラル”の一歩でもあります。

太陽光発電装置

なぜ、ここまでして環境に投資するのか?

「環境への投資は、最終的にコストダウンにつながるんです」と吉田社長は断言します。
実は、染色業界では複数の企業で排水処理設備を共同利用する“寄り合い方式”が多く採用されています。
しかし近年は、そうした寄り合い企業の数が減少。処理コストの負担が増えるケースも出てきているといいます。
「自社で完結できる体制が、むしろ経済的になるんです」と、先を見据えた判断が功を奏しているようです。

工場敷地内の緑地

「夢の染工場」を目指して

吉田社長は将来的に、社内設備のさらなる自動化・システム化を見据えています。
人と機械、それぞれが最適な役割を果たしながら、環境にも人にもやさしいものづくりを実現する。
そのビジョンは、「夢の染工場」という言葉に込められています。

自然の恵みを大切にしながら、ものづくりの未来を描く吉田染工。
その静かな革新は、染色業界においても、持続可能な社会づくりにおいても、着実に前進を続けています。

企業情報  吉田染工株式会社
業種製造業(ニット・織物・資材用糸の染色加工)
従業員数47人(2021年度)
所在地和歌山県紀の川市
会社URLhttps://yoshidasenko.co.jp/